お気に入り手品アイテムをひたすらレビューするブログ

愛してやまない手品道具について語ります。

ダーク大和『バケツ』

先月、初めてこの奇術を人前でやりました(セリフをど忘れして重要なところをすっ飛ばしたりしましたが)。

越谷の喰蔵というお食事処でやりました。ここでは月に一回、マジシャンの集うサークルのようなイベントがあります。そこでは超絶的なマジックマニアが集まるのですが、わたしはそういう場で、この手順をやらせていただいたわけであります。

しかしやはり、一朝一夕には名人芸は真似できぬということを知って、打ちのめされました。

これは、奇術界の玉三郎と呼ばれた伝説の奇術師であるダーク大和師匠のマイザーズドリームです。
素晴らしい芸です。
タネも仕掛けも、その上オチまで分かっているというのに、何度見ても面白いのです。
まさに名人芸です。
使用される手品的な技法といえばコインのフォールスカウントと超簡単なフィンガーパームモドキくらいなもので技術的にはめちゃくちゃ簡単です。が、この手順は手品とは別のところを稽古せねばなりません。

このレクチャーでもダーク大和師匠が言っておられますが、これは手品ではなく漫才です。間の取り方とか、喋りの雰囲気で観客のキッズと即興の漫才をするわけです。

実際にやってみて分かったのですが、台詞や動作が緻密に計算されており、解説通りに演じれば、即興で呼び出した観客(少年である必要があります)がまるでサクラなんじゃないかというくらいに空気を読んだリアクションをかましてくれます。ダーク大和師匠の見た目が、少年アシベの親父みたいな雰囲気なので、この奇術がそこまで計算し尽くされたネタとは思ってなかったのですが、猛省しました。

わたしはこれを持って漫才師というのは、自分を客観視する能力を持ち、かつ頭が良くなければならないと悟りました。

何がすごいって、この手順は観客席から呼び出した何の打ち合わせもしてないキッズから自然なボケを引き出すことができるのです。

しかし、演者が慣れないギャグで『面白いことを言ってやるぞ』みたいに力んでしまうと、たぶん滑ります。わたしもこの前やった時、滑りました。これはセリフが身体に馴染んでいなかったせいです。これはセリフが自分のものになるまで稽古するしかないと思います。手品とは別の難しさがあります。人前で恥を捨てるという稽古が必要かと思われます。

こういう芸が自然にこなせるようになれば、他のマジックも面白くなるような気がします。スライトが上手くなるのも、もちろん大切だとは思うのですが、『技術的な上手い下手の彼岸』をダーク大和師匠から学べたような気がします。本当に素晴らしい奇術師です。